鋼の錬金術師  ドリーム小説「ロイの査定」         




珍しくロイは自分の執務室で書類と向き合っていた。


「いいですか?この書類を今日中に終わらせてください。終わるまで帰ってはダメです。」


そういって朝、リザが持ってきた書類はロイが隠れるほどだった。その量を見て逃げようとしたロイだったがリザの阻止に合いそれ以降は大人しく仕事をしていた。


「・・まだ帰れないか。」


外がすっかり暗くなった今現在もまだ少し残っていた。


時計の音とペンを走らせる音だけが執務室に響いている。そんな静かな執務室にベルの音響いた。


「電話・・・はぁ。」


重い腰をあげ、ロイは電話の受話器を取った。


「何だ。」


『マスタング大佐、大総統府よりお電話です。』


てっきりヒューズからの電話だと思っていたところに交換手の思いがけない言葉。ロイは困惑した。


「大総統府?・・・まあいい。繋いでくれ。」


ブツっという音がして回線が繋がる。


「もしもし、マスタングですが。」


大総統府という言葉に緊張ぎみに言うと受話器のむこうから聞こえてきたのは明るい声だった。


『あ、大佐?』


!」


電話の相手は良く知っているだった。


「大総統府からだというから誰かと思ったよ。」


『国家錬金術師機関は大総統府直属の機関だからね。一応大総統府所属だからさ〜。』


「そうだったな。それよりもが私に電話なんて珍しいな。どうしたんだ?」


がロイに電話をかけることは滅多になくよっぽどの用件でなければかけてこない。


『ん〜気が向いたからさ。』


「気が向いたって。まあ君の声が聞けて嬉しいよ。私としてはいつでもかけて欲しいんだがね。」


『あ〜はいはい。それよりもさ大佐来週こっちにこれる?』


さらりとロイの言葉を流す。ロイは軽くヘコんだ。


『大佐、聞いてる?』


「・・・聞いてるさ。来週何かあるのか?」


『とりあえずこっちに来て欲しいの。』


の言葉にロイはテンションがあがった。


「そんなに私に会いたかったのか?嬉しいよ。からの誘いならいくらでも時間を空けるさ!」


『あ、時間空けてくれるの?よし、じゃあ1時ごろに大総統府に来てね〜。』


「あぁ、分かった。」


『じゃあまた来週!』


「っていつ行けばいいんだ!?!?」


すでに電話は切れていた。かけ直してみたが今さっきまではいたはずなのにすでに居ないといわれた。


「いつ行けばいいんだ!?」


そこへリザがコーヒーと手紙を持って戻ってきた。


「大佐、書類終わったのですか?」


「あ、いやもう少しなんだが・・・」


「早く終わらせてください。あぁ、大佐宛てに国家錬金術師機関から手紙が届いてましたよ。」


コーヒーと共にリザは手紙をロイの机に置く。椅子に座りコーヒーを飲みながら封をあけた。


「・・・そう言うことか。」


中身を見てロイは乾いた笑みを浮かべた。





から電話があったちょうど1週間後、ロイは軍服で珍しくカバンを持って大総統府を訪れた。


将軍はどこに?」


「あ、マスタング大佐。将軍なら執務室でお待ちです。」


「ありがとう。」


受付での居場所を聞き、ロイはの執務室へ向う。その足取りは決して軽いものではなかった。


「マスタングです。」


ノックをして声をかけると扉の向こうから明るい声が返ってきた。


「開いてるよ。」


「失礼します。」


ドアをあけるとが笑顔で椅子に座っていた。


「遅かったね、大佐。」


「それはすまなかったな。」


ロイはソファに座った。


「何不機嫌そうな顔してんのさ?」


もロイの正面のソファに移動する。


「査定のためなら査定だと言って欲しかったね。」


「あれ?言わなかったっけ?」


「言ってない!しかも時間だけいって日にちはいわずに切るし・・・」


額に手を当ててロイは言った。


「てか手紙見てなかったの?」


「電話の後私の手元に来たよ。」


「てっきり見てると思ってたからさ。それよりもレポート頂戴。」


ロイは軽くため息をついてカバンからレポートを取り出す。それを受け取ったはパラパラとめくった。


「もう少し真面目に見たらどうだ?」


「だって大佐だからそんな確認しなくてもOKでしょ。」


そう言って立ち上がると机の上において置いた書類と判子をソファの前のテーブルに置いた。


「レポート合格っと。」


レポートの欄に印を押す。


「適当だな。」


「後でちゃんと目を通すよ。それよりも実技、何にしようかな?」


腕を組んでは悩んだ。


「考えてなかったのか?」


「まあね。どうもやる気にならないんだよね、大佐の査定って。大佐の活躍を聞いただけでも査定になっちゃうんだよねぇ。」


セントラルにいるにも東部でのロイの活躍は耳に入ってきている。
その内容からロイへの実技の査定は必要ないとは考えていた。しかしそうもいかない。
国家錬金術師が1年に1回査定を受けることは義務であり誰であろうと免除されることはない。
も毎年査定を行っている。


もしがロイの査定を免除すればそれは2人の立場を危ういものにするだけである。
とロイが仲良いことは軍部内で有名でロイの査定を免除すれば贔屓だといわれの立場をねたんでいたり好ましく思っていない奴らから何を言われるか分からないのだ。


「普通で良いじゃないか。」


「普通って大佐の練成は普通に見ても面白くないしなにより意味がないでしょ?大佐の練成は戦闘時にもっとも能力を発揮するんだから・・・。」


そう話したは何か思いついた顔をした。


「そっか、そうすっか。」


「何を思いついたんだ?」


恐る恐るといった感じにロイはに尋ねる。はそれには答えずに立ち上がるとドアをあけて通りがかった憲兵にリヒトを呼ぶように言った。


、何をするつもりなんだ?」


「査定だよ?勿論。」


「失礼します。将軍、お呼びですか?」


リヒトが足早にやってきた。


「頼みがあるんだ。」


「何ですか?」


「今から錬兵場を空けてきて欲しいんだ。」


その言葉にロイは嫌な予感がした。


「錬兵場ですか?一体何をするつもりなんですか?」


にやりと笑いは答えた。


「戦闘査定だよ。」


ロイの予感は見事に的中した。




「何故査定が戦闘になるんだ!?」


とロイ、そしてリヒトの3人は錬兵場へやってきた。そこに何故か多くのギャラリーが居た。


「だから大佐の能力は戦闘時にもっとも発揮されるものだからいっそ戦闘してもらったほうがいいと思ってさ。」


「まったく・・・で相手は誰なんだ?」


「それは・・・」


がロイの戦闘相手を言おうとしたその時ヒューズがやってきた。


「よ、お2人さん!」


「あ、中佐。久しぶり。」


「ヒューズ・・・」


ヒューズはロイの肩をバシバシと叩いた。


「お前も勇気あるな!と戦うなんて!」


「・・・今なんていった?」


青ざめた顔でロイは言った。


「ん?だからと戦うなんて勇気があるな、お前。」


と戦う!?」


「そ、対戦相手は私だよ大佐。」


満面の笑みで言うにロイは呆然とした。


と戦うなんて命がいくつあっても足りないじゃないか!」


付き合いの長いロイはの戦闘能力の高さをよく知っている。それはヒューズも同じだ。
だからこそヒューズはロイに勇気があるなと言いロイは青ざめた顔をしているのだ。


「最近、書類ばっかの仕事で体なまってたからいい運動になるな〜。」


伸びをして呟いたにロイはもう何もいえなかった。


「まあ死なないように、頑張れよ。」


「あぁ。」


「じゃあいっちょ始めっか!」


そう言うとヒューズはどこからともなくマイクを取り出した。


『レディーズアンドジェントルマン!セントラルの錬兵場へようこそ!』


ヒューズの声が響き、ギャラリーのテンションは一気に上がる。


『色々言いたい事もあるがさくっと進めるぜ!本日のメインイベント!蒼雷vs焔、国家錬金術師対決!!』


テンションのあがっていくギャラリーに対してロイはヘコんだままだった。


『赤コーナー、焔の錬金術師ロイ・マスタング!!』


ヒューズの紹介の後ギャラリーからは「自分だけ出世しやがって」や「俺の女返せ!」などと言った声が飛び交う。
しかしロイは未だにヘコんだままだった。


『青コーナー、蒼雷の錬金術師!!』


ロイのときとは違いざわめきが広がっていく。


実はギャラリーのほとんどの目的はだった。
軍部のほとんどの者がが戦っているところを見たことがない。上に行けば行くほど実際に戦闘に参加することは少なくなりここ何年かは前線へ赴いても指示を出すだけでほとんど戦闘には参加してない。

そのためか軍部内には「将軍は実は戦闘能力は皆無でありそのため戦闘に参加しない。今の地位は大総統に取り入って得た。」などといった噂が流れていた。

実際はどうなのか、皆気になっていたところにこのロイとの対決。
見に行くしかないといった感じで多くの人が集まったのだ。


「いい加減復活してくれないかな?大佐。」


今だヘコだままのロイに声をかける。


「まだ死にたくなかったんだがな・・・」


やる気を出そうとしないロイにはため息をついた。


「一応査定なんだからそこまで本気ではやらないよ。」


「だとしても君と戦うのは・・・」


仕方ない、とは呟くと腕を組んで言った。


「じゃあこうしよう。もし私に勝てたら・・・と言うのは辛いかも知れないから傷1つ負わせたら1つだけ大佐の言うこと聞いてあげるよ。」


「ホントか!?」


まさに鶴の一声だ。ロイは目を輝かせた。


「ホント。ただしもしダメだったら・・・私の言うこと1つ聞いてもらうからね。」


「いいだろう!」


ロイは右手に発火布を装着した。


『話も終わったみたいだな?じゃあレディー・・・・ゴー!』


ヒューズの合図と共にロイは指を弾く。赤い光がに向って伸びていく。


「無駄だよ。」


は左手を上げる。中指には銀色の指輪が光っている。
その指輪から蒼い光が赤い光に向って伸びていく。2つの光はぶつかりボンと大きな音を立てて消えた。


「やはりきかないか。」


「当然。こんなことじゃ私に傷はつけられないよ?」


「ならばこれなら。」


再びロイは指を弾く。赤い光が再びに向う。が2人の丁度中間ぐらいのところで爆発し砂煙が立ち込めた。


「ゴホ・・・そう言うことね。でも甘いね。」


隠し持っていた長針を背後い投げる。


「っ!さすがだな、。」


ロイはすれすれのところで避けた。


「お褒めいただき光栄ですね。」


砂煙も落ち着いてくる。


「さて、今度はコチラから行きますか。」


消えた、ギャラリーの誰もがそう思った。


それほどのスピードではロイの背後に移動し針をロイの首に当てる。


「っ!!」


「勝負、あったかな?」


「だな。」


ロイは両手を肩の高さまで挙げた。


『勝者、蒼雷の錬金術師!!』


ヒューズの声に一拍おいてからギャラリーは騒ぎ出した。


「あ〜久々に動いた。」


「やっぱりにはかなわないな。」


ロイは振り返ってと向き合う。


「でも大佐もいい動きするようになったんじゃな?」


「そりゃ賭けがかかってたからね。」


「そうだった。何にしようかな〜。」


はあごに手を当てては考え出す。


「お願いの前に片付けしなきゃね。」


錬兵場の真ん中にはロイが起こした爆発によって穴が開いていた。


「片付けって言ってもこの辺直すだけだからね。」


簡単に言うが穴の大きさは結構なもので人の手で直すには結構な人数が必要な大きさだ。
錬金術で直すにしても何度かに分けなければならないだろう。


「ギャラリーに声をかけるか?」


「いや、その必要はないよ。」


指輪をつけた左手で地面に触れる。すると蒼く光る。
みるみるうちに穴は消え、10秒後には元の状態に戻っていた。


「終わりっと!」


手をはたきながらは立ち上がる。


「相変わらず凄いな、。」


「まあね。」


ヒューズがマイクで声をかけギャラリーはぞろぞろと帰っていく。


「さて今年の査定は終了。分かってるとは思うけど合格って事で。」


「来年は戦闘査定だけは止めてくれ。」


「頭に入れとくよ。」


ギャラリーを帰し終えたヒューズが歩み寄ってくる。


「お疲れさん。」


「中佐もね。」


「あはは、俺は好きでやってるからな。してもロイが無傷で終わるなんて珍しいな。」


ロイにも勿論にも傷一つなかった。


「たまにはね。」


とロイが戦うと大抵ロイはボロボロになって終わるのだ。


「ふ〜ん?おっと、俺も仕事に戻らないとな。」


「そっか。じゃあまたね、中佐。」


「おう。じゃあな、ロイ。」


「あぁ。」


ヒューズは手を振りながら歩き出した。


「さて私たちも戻りますか。」


の執務室に向って2人もゆっくりと歩き出す。


「それで決まったのか?」


「ん?」


「賭けだよ。」


「あぁ、それね。・・・これにするかな。」


ロイの肩をポンと叩く。


「今夜、食事奢って。」


「それで、そんなのでいいのか?」


「いいよ。てか久々に会ったからゆっくり話でもしよう。」


ロイは顔をほころばせた。


「そうだな。」


「よし、着替えて食べに出かけるぞ!!」


「好きなもの、奢るよ。」


「何しようかな〜♪」


2人は足取り軽く執務室へと歩いていった。





end



焔様のサイトで4500hitを踏みましてリクエストして書いていただいちゃいました!
ほんとうにありがとうございました!

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